Update 2021.05.09 2011.02.07

双子のパラドックスのすべて
特殊相対性理論

兄は双子の弟を地球に残し,亜光速(0.96c)のロケットで出発し,24光年の距離ところで反転し同じ速度で地球に戻る.再会した双子のどちらが年をとっているか?

結論を先に言うと,弟は50年,兄は14年経過している.このパラドックスを4つの方法で解決する.

お互いに遠ざかっているときまたは近づいているときは,お互いに相手の遅く進む時計を観測すると説明されるが本当にそんなことが観測されるのだろうか.実はそもそもこの説明と解釈が正確ではない.

長さの収縮と時計の遅れを時空図で説明されてもまず理解できないだろうし,たぶん間違った解釈をするだろう.それは時空図によって私たちは神の視点を持つからである.つまり,兄と弟がお互いに観測するのではなく,また,神の視点で観測するのでもなく,私たちは正しい観測者を配置しなければならないのである(ガレージのパラドックスでも同じ観測者を配置したように).

ここからこのパラドックスを4つの方法で解決する.

◆◆このWEBページのオリジナルのPDFファイルは次を参照のこと◆◆
(PDFファイルの方がきれいで読みやすいです)
『双子のパラドックスのすべて 特殊相対性理論』

『ガレージのパラドックスのすべて 特殊相対性理論』

■ 双子のパラドックス その1

兄は双子の弟を地球に残し,亜光速(0.96c)のロケットで出発し,24光年の距離ところで反転し同じ速度で地球に戻る.再会した双子のどちらが年をとっているか?

結論を先に言うと,弟は50年,兄は14年経過している.証明もごく簡単である.しかし,観測される不思議な物理現象をきちんと説明できなければ,パラドックスが生まれる.
 
ミンコフスキー時空図を正確に書くため,兄は亜光速で飛んでいるロケットに乗り移ることとする.重力が固有時間に影響を与えるので,待っている弟は,固有時間に影響のない重力のない地球近くの宇宙ステーションにいることにする.

 
ローレンツ変換を計算するまでもなくミンコフスキー時空図から弟の方が年をとるのが早いことが判る.ミンコフスキー時空の三角形の定理(ミンコフスキーの不等式ともいう)は,二辺の和は他辺よりも短いというものである.これはユークリッド幾何と逆である.
 
弟の世界線は軸,兄の世界線は軸であり,ユークリッド幾何の意味で明らかに兄の方が長いのでミンコフスキー時空の意味では兄の方が短いのである.世界線の長さは固有時間そのものであるから,兄の固有時間が弟のそれより短いという結論が時空図から得られるのである.
 
弟から兄の動きを見れば,反転までに掛かる時間は,
    
となるので,弟の時計で弟から兄を観測すると,24光年(S)の距離まで行くのに25(S)年かかり,戻って来るのにも25年(S)かかり,50年(S)が経っている.
 
兄が自分の動きを見れば,反転までに掛かる時間は,
    
    
別の見方をすると,反転位置が0.96cで近づいてくるので,
    
(観測者の立場を入れ換えたのでプライム付が普通の公式とは逆である)
のところに反転位置があり,反転までに掛かる時間は,
    
である.兄の時計で兄は自分を観測すると,24光年(S)の距離が0.28倍に短縮されている6.72光年(R)を0.96cの速度で7年(R)で到達し反転し,7年(R)で帰ってきて14年(R)が経っている.
 
これを公式で示すと,
    
となる.
 
再会したときは,出発から,兄は14年(R)後,弟は50年(S)後である.これはミンコフスキー時空図からみると完全に正しいのである.「浦島太郎」や「猿の惑星」は本当にあるのである.
 
しかし,特殊相対性理論の相対性から,兄から見ても弟の時計は遅れていて,兄の方が年をとると結論することもできるように思える.だが,二人が再会したとき年をとる方が兄だったり弟だったり観測者によって違って見えるようなことはない.同一時刻,同一場所であるからである.パラドックスは再会することから生まれるのである.
 
つまり,二人は完全に相対的ではないのである.ただ一つ違うのは兄が反転することである.この反転のときに加速され重力が生じる.そこで一般相対性理論により重力がかかる時計は遅れるということになる.
 
従って,双子のパラドックスを証明するには一般相対性理論の重力の影響を計算することが必要になる.ただ,経過年数の計算は,特殊相対性理論のローレンツ変換とミンコフスキー時空図があればできるのである.その根拠はそれぞれの固有時間が世界線に沿っての積分から算出できるからである.
 
この類の相対論的な実験がなぜパラドックスになるかというと,物理の実験として理論に合わないことが観測されるということでは決してない.相対論は物理の実験としてはあらゆるところで検証が済んでいる.
 
相対論のパラドックスは,動いているものは縮み,その時計は遅れることの実験の説明が誤解されることから生まれる.不思議な現象が観測されるのは事実だが,実験の観測を慎重にやることによりパラドックスは解消する.
 
■ 双子のパラドックス その2

兄は双子の弟を地球に残し,亜光速(0.96c)のロケットで出発し,24光年の距離ところで反転し同じ速度で地球に戻る.再会した双子のどちらが年をとっているか?
 
出発してから再会するまでずっと自分より相手の方が時計の進みが遅いことがお互いに観測できる.しかし,再会時は,弟は50年,兄は14年経過している.ミンコフスキー時空図からロケットが反転した瞬間に地球の弟が1.96年から48.04年に一気に年をとるように見える.本当にそんなことが観測されるのか.これが1つめのパラドックスである.

 
線Aは軸に平行な反転直前のロケット系の同時線で,線Bは反転直後のロケット系の同時線である.反転直前に地球の時計が1.96年であることをロケット系が観測でき,反転直後に地球の時計が48.04年であることをロケット系が観測できる.だが,反転時にはロケットが地球の時計を直接観測できないことに注意しなければならない.
 
お互いを正確に観測するためには,地球系に固定された多くの観測者とロケット系に固定された多くの観測者を用意しなければならない.観測者をビーコンと呼ぶことが多い.
 
地球系の観測者はその慣性系で静止していてすべての観測者は同じ時を刻む(固有時間が同じである).ロケット系も同様である.自分の時計の記録はあとから持ち寄り皆に知らせることができる.
 
イメージを鮮明にするために長いロケットを用意する.観測者の名前と位置を図のとおりとする.地球の弟がS0,ロケットの兄がR0である.慣性系であることを確実にするため,ロケットは最初から0.96cで飛んでいて,R0がS0に一致したときに兄がスーテンションからロケットへ乗り移ることにする.このときすべての観測者の時計を初期化する.

固有長,固有時間の比 
S24がR0の通過を見るときS24の時計は,
R0がS24の通過を見るときR0の時計は,
S0がR6の通過を見るときS0の時計は,
R6がS0の通過を見るときR6の時計は,
(距離の単位を光年とし,として計算できる)
 
ロケットの反転は,ロケット系の時計で7年(R)に同時に起こる.反転時,R0とS24が,R6とS0が衝突して時計が停まったとしよう.すべての観測者は両方の時計が見れるようになるのだが何年で停まっているのだろうか。これが2つめのパラドックスである。
 
線Aはの同時線だから,既に算出してあるように,
S24とR0が出会うとき,25年(S)と7年(R)である.
S0とR6が出会うとき,1.96年(S)と7年(R)である.
 
衝突したという事象はそれぞれ自分の時計でしか記録できなく,通過する時刻と同じである.つまり,R0とR6の時計は7年,S24の時計は25年,S0の時計は1.96年で停まっている.ロケット系の時計で7年(R)に反転という同時に起こったことが,地球系では25年(S)と1.96年(S)の違いがあるのである.これで2つめのパラドックスが解決できた.

 
ロケットを反転させると慣性系ではなくなり説明が複雑になるので,反対方向から0.96cで飛んでくるUFOへR0から乗り移ることにする.UFOの時計はに初期化される.にR0が出会うUFOの部分をU0とする.このときU0の前方6.72光年(U)のところにあるU6はS0と出会うがR6とは出会わない.ロケットとUFOの相対速度が0.96cでないからである.
UFOは線Bの同時線上にあるので,
S0とU6が出会うとき,48.04年(S)と7年(U)である.
S0は,R6とU6を同時には見れない.
S0から見て同時に見れるのは,U6とR164である.
S0がR164の通過を見るときS0の時計は,

(実は逆算してR164の位置を決めた)
 
地球系から観測したロケット系の同時事象とUFO系の同時事象には大きな隔たりがあり,R6が観測する1.96年(S)とU6が観測する48.04年(S)を比較して,S0の時計の針が一気に進むことを誰かが観測するということは特殊相対性理論の範囲では言えない.
 
ロケットの向きを変えるのではなく,むりやりに逆噴射させて反転したらどうなるのか?反転はロケット系の時計の7年(R)で起きる.S24とR0,S0とR6が出会うときである.特殊相対性理論では説明できないことが起きる.
 
R6は7年(R)のときS0の時計が1.96年(S)から48.04年(S)に一気に変わるのを観測する.
S0はS0の時計で1.96年(S)から48.04年(S)までR6がS0の位置で停まっているのを観測する.このときR6の時計は7年(R)のままである.
 
この現象はブラックホールの地平面で起こる現象と同じである.これは無限大の加速度で反転するから無限大の重力が生じて,それが引き起こす現象だと考えられる.
 
このようなことは,S0とR0以外の観測者(一般にはビーコンと呼ばれる)が観測した現象である.パラドックスはビーコンが観測するのである.「その3」,「その4」では,地球S0とロケットR0以外の観測者を用意しないで説明しよう.
 
■ 双子のパラドックス その3

兄は双子の弟を地球に残し,亜光速(0.96c)のロケットで出発し,24光年の距離ところで反転し同じ速度で地球に戻る.再会した双子のどちらが年をとっているか?
 
ミンコフスキー時空図より時計の進み・遅れを算出するのではなく,もっと現実的な方法として,光通信,電波通信を利用する方法がある.実際に,月や惑星探査衛星との間で,地球の時計と人口衛星の時計の進み・遅れを調整するイメージで考えてみる.
 
動いている相手の時計の進みを知るには単純に定期的に光信号を送受信する方法がある.光信号のなかに数字のコードを入れることもできる.この方法で観測すると,ロケットの反転時に地球の時計が一気に進むことは観測できない.これは,パラドックスではない.「その1」や「その2」で説明したことの方にパラドックスができやすい.

 
地球の弟S0は自分の時計で1年(S)毎に,ロケットの兄R0も自分の時計で1年(R)毎に光を発信することにする.受信したら自分の時計の読みを相手に連絡することにする.
 
S0の時計とものさしで,1年(S)に発信した光信号は,              
だから,25年(S)に24光年(S)のところでR0に届く.このことは,あとから24光年(S)の位置のS24から「R0と光が同時にS24を通過した」という連絡を受けてはじめて判る.
 
R0のものさしと時計で,
    
だから,6.72光年(R)の位置のR0で7年(R)に受信する.ここでR0が光信号に「R0の受信時は7年」というコードを入れてS0に送れば,S0は連絡を受けたあとS24からの連絡と比較してR0の時計は遅れていると認識する.
 
R0は自分の行程が6.72光年(R)であることと,光が6.72年(R)かけて到達したことも知っている.S0の光の発信時をR0の時計で計算すると,
    年(R)
S0の時計で1年(S)に発信されたことを知っているから,R0の観測(計算)では,S0の時計の1年(S)がR0の時計の0.28年(R)となる.驚くべきことにこの計算ではR0はS0の時計が進んでいると認識する.そしてR0とS0の認識に計算上の矛盾がない.

 
これらの計算は相対性からお互いに成り立つ.つまり,受信時の連絡を受けると相手の時計は遅れていることが判るが,自分の時計で計算してみると相手の時計は進んでいることになる.相手の時計を覗いて見比べているわけではないことを再三注意する.
 
もしロケットは反転しないでそのまま飛ぶとしても,2年(S)で発信された光を受信してR0の時計で計算すると,0.56年(R)になり0.28年(R)毎に発信されていると認識する.驚くべきことだが,ロケットが反転してもこの状況は変わらない.具体的にどういうことが観測できるか.
 
S0は50回発信する.R0はR0の時計でS0から次のように受信する.
往路 7年(R)で1回
復路 7年(R)の間に1/7年(R)毎に49回
 
R0は14回発信する.S0はS0の時計でR0から次のように受信する.
49年(S)まで,7年(S)毎に7回(R0の往路)
49年(S)から50年(S)まで,1/7年(S)毎に7回(R0の復路)
 
もちろん,受信回数は相手の時計の年数(相手の年令)と同じである.
 
前の計算と同じように,反転してもお互いに相手の距離は自分のものさしで判っているので,相手の光の発信時を自分の時計で計算することができ,それはお互いに自分の時計で0.28年毎に発信されていると計算される.1年毎に発信されていることも知っているのでお互いに相手の時計の進みが速いと認識するのである.
 
S0の時計の25年(S)でR0は反転する.このときS0から発信された光は,12.245年(S)後に反転から11.755光年(S)のところでR0に届く.
    
R0のものさしと時計で,反転から3.291光年(R)のところで(7+3.428)年(R)に受信する.
    光年,
(導く式は略,検証のみ)
光は年かけて伝播するのでS0の光の発信時をR0の時計で計算すると,
    年(R)
R0はS0の時計で25年(S)に発信されたことを知っているから,R0の観測(計算)では,S0の時計の1年がR0の時計の0.28年となる.
 
R0はS0の時計が一様に時を刻むのが観測で判るのである.そして,受信回数が増えるのでS0の年令が増えるのも観測できる.
 
相手の光の発信間隔に注目すると,R0は自分の時計で相手が0.28年間隔で50回発信していて14年分を受信したときに再会する.一方,S0は自分の時計の計算で相手が0.28年間隔で14回発信していて3.92年分を受信したときに再会する.0.28年間隔というのはあくまでも自分の時計とものさしでの計算であり,自分の時計で0.28年間隔で受信したのではない.また,固有時間の比でもないので念のため.
 
「その2」のミンコフスキー時空図からS0の1.96年から48.04年は情報の空白期間という説明をされることがあるが,「その3」のミンコフスキー時空図では,情報の空白期間もないし, S0の時計が1.96年(S)から48.04年(S)に一気に進むということをR0は観測できない.
 
繰り返すが,相対論の観測は自分の目の前の事象を自分の時計で記録するほかはなく,ミンコフスキー時空図を神の目の視点で考えて説明するといくらでもパラドックスをつくれてしまうのである.
 
■ 双子のパラドックス その4

兄は双子の弟を地球に残し,亜光速(0.96c)のロケットで出発し,24光年の距離ところで反転し同じ速度で地球に戻る.再会した双子のどちらが年をとっているか?
 
動いている相手の時計を直接観測するには超高性能な望遠鏡を使えばできる.理論的な望遠鏡なので観測方法をきちんと定義したい.
 

 
地球S0の時計で1年(S)に光信号を発するとはフラッシュをたくようなイメージであるが,同時に数値をコードにして光信号に入れてもよい.しかし,わざわざフラッシュを使わなくてもS0の時計から光を発しているのである.そしてその微弱な光をロケットR0の超高性能望遠鏡でキャッチすることができ,R0からS0の時計が読めるのである.
 
時計から発している光はその時針の絵を固定したまま望遠鏡にキャッチされるので,キャッチされた絵を読めば発信時刻が判るのである.つまり,超高性能望遠鏡から観測できるのは,実は「その3」で説明した光信号と同じである.
 
R0の反転の直前,R0の時計で7年(R)のときS0の時計を直接覗くと1年(S)と読める.ここで覗くの意味は,S0の時計の1年(S)の絵が光となってR0の望遠鏡に届いたということである.
 
R0の時計で6年(R)のとき望遠鏡で読めるのは6/7年(S)である.R0の時計で8年(R)のとき望遠鏡で読めるのは8年(S)である.反転前は1年(R)に対して1/7年(S)進むように読める.反転後は1年(R)に対して7年(S)進むように読める.9年(R)のとき15年(S),10年(R)のとき22年(S),・・・,13年(R)のとき43年(S),14年(R)のとき50年(S)である.これはそのように読めるのであって固有時間の比ではないので念のため.
 
つまり,R0からS0の時計を覗いていると,反転前後でS0の時計の針の進む速さが変わるが,「その2」で示した反転の瞬間にS0の時計の針が一気に進むというようなことは観測できないのである.
 
繰り返すが,相対論の観測は自分の目の前の事象を自分の時計で記録するほかはなく,ミンコフスキー時空図を神の目の視点で考えて説明するといくらでもパラドックスをつくれてしまうのである.
 
 
別の時空図の例をあげよう.光速の4/5=0.8の速さで出発し4光年のところで反転し帰ってくる.計算を確認してみるとよい.
 

 
 
    
    
の単位を光年とし,として計算できる)

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