トップページに戻る シュッツ"相対論入門" 練習問題 解答
Update 2021.07.06 2012.02.20

マクスウェル方程式の微分形式・外微分表現
挫折しない微分幾何学(リーマン幾何学)

マクスウェル方程式のあらゆる表式を一つにまとめると次式になる(SI単位(国際単位))。この究極の式に到達するまで,マクスウェル方程式のあらゆる表式を導出する。

$$ d^{\ast }F=\mu_{0}\,^{\ast }J $$ $$ dF=0 $$

F はファラデー,*F はマクスウェルとよばれる(4次元)2形式である。*F は2形式Fの双対なので2形式である。2形式は2次微分形式のことで共変交代テンソルである。この外微分がマクスウェル方程式の究極的の式である。外微分により共変が1階上がるので左辺は3形式となる。

J は4元電流密度(1形式),* はホッジ作用素(双対をつくる)である。*J は1形式J の双対なので3形式である。

マクスウェル方程式のオリジナルは電磁ポテンシャル表現だったらしいです。それを3次元空間ベクトル表現に直したのはヘルツらしい。さらに,ファラデー・テンソル表現,そして究極的に微分形式により表現することができる。

ところで,上の数式は,MathJax-LaTeXとhtmlを使っている。次からの数式は,WORDからhtmlへの変換でできた画像であり,不正確のところがある。次のPDF形式を推奨する。

◆◆このWEBページのオリジナルのPDFファイルは次を参照のこと◆◆
(PDFファイルの方がきれいで読みやすいです)

『マクスウェル方程式の微分形式・外微分表現』

◆◆次のWebも参照してください◆◆

『マクスウェル方程式のテンソル・微分形式・外微分超入門』

『アインシュタインの総和規約/縮約記法をマスターしよう』

『SI単位(国際単位)とガウス単位の理論体系』

◆◆単位系について重要な注意◆◆

単位系によってマクスウェル方程式の中に光速が現れたり消えたりするするのはなぜか。

SI単位(MKSA)では光速を1とするから光速が現れないとするのは大きなマチガイです。

ガウス単位でもSI単位でも光速は,
c = 3×10^8 m/s = 3×10^10 cm/s
であり,決して 1 ではありません(あたりまえです)。

1 になるのは,SI単位での普遍定数である。ガウス単位での普遍定数は光速と同じです。実はガウス単位でのマクスウェル方程式の中の c は普遍定数と光速の両方なのです(区別されていないということ)。

詳細は上のWebサイトを参照してください。


【重要な注意】冒頭の式も次の式もどちらも微分形式(differential form)と言われることがある。明確に区別したい場合は,冒頭の式を3形式(three-forms)の式,または,共変交代テンソル場(differential form of degree 3)の式,または,外微分形式(exterior differential form)の式などと言う。


◆◆ここから本題◆◆

■ マクスウェル方程式のあらゆる表式のまとめ

・3次元空間ベクトル表現


・(4次元)電磁ポテンシャル表現


・(4次元)ファラデー・テンソル表現


・(4次元)電磁ポテンシャル表現その2


・(4次元)微分形式・外微分表現



【表記法】Misner, Thorne, & Wheeler「GRAVITATION」(FREEMAN)いわゆるMTW phone bookのMTW notationに原則として準じる.微分幾何学の4次元表現はいまだ統一されていないが,MTW notationが最も美しく判りやすいのではないか.

【注意】MTW phone bookやSchutz著では3次元空間の電磁気量をすべてベクトルとして扱う.3次元空間の電磁気量を3次元微分形式で表現する流儀もあるが相対論に合わない(巻末の参考文献の北野,河合を参照).



■ マクスウェル方程式(真空中)の3次元空間ベクトル表現
◆ 最もポピュラーなマクスウェル方程式の3次元空間ベクトル表現
・有理化SI単位(国際単位)
        (mx1.1)
            (mx1.2)
                    (mx1.3)
                 (mx1.4)
・非有理化ガウス単位
       (mx1.5)
          (mx1.6)
                    (mx1.7)
                (mx1.8)
 
式(mx1.1),(mx1.5)は,電場のガウスの法則(静電誘導の法則)
         ;クーロンの法則と等価である.
式(mx1.2),(mx1.6)は,アンペール‐マクスウェルの法則
         ;定常電流の磁気作用を表すアンペールの法則の一般化である.
式(mx1.3),(mx1.7)は,磁場のガウスの法則(磁気誘導の法則)
         ;磁荷が存在しないこと,電流の他に磁場の源泉がないことを表す.
式(mx1.4),(mx1.8)は,ファラデーの電磁誘導の法則
         ;磁束密度の時間的変動により電場が誘導されることを表す.
 
(次の式はガウス単位では,
                  (mx1.9)
                  (mx1.10)
where
         ;電束密度             
         ;磁場                
         ;磁束密度             
         ;電場                 
         ;電荷密度             
         ;電流密度             
         ;真空誘電率          
         ;真空透磁率          
         ;真空光速?(真の意味は後述)
【表記法】JIS Z 8202によれば,電流Iの単位がA(アンペア)であることを次のように書く.
        
【注意】ガウス単位の式での単位は,「◆ 電磁量の単位の次元」を参照.
++++++++++++++++++++++++++++++++
SI単位(国際単位)とガウス単位の違いを,大学で教えることは滅多にないが,それは単位を厳密に扱ってこなかったからである.
本書と同じでサイトで,SI単位(国際単位)での式とガウス単位での式の物理量の次元が厳密に一致することが証明されている.

「SI単位(国際単位)とガウス単位の理論体系」
 
ガウス単位での式に幽霊のように現れる真空光速,実はこれは普遍定数である.これらを区別して隠れ次元を省略しなければ,SI単位での式とガウス単位での式の物理量の次元は一致する.重要なことは,SI単位(国際単位)でもガウス単位でも真空光速は,であり,決して1ではない.1になるのは,SI単位での普遍定数である.
++++++++++++++++++++++++++++++++
◆ 隠れ次元を省略しないマクスウェル方程式
・有理化SI単位(隠れ次元を省略しない式)
          (mx1.11)
          (mx1.12)
                     (mx1.13)
                 (mx1.14)
where   (これは重要)
・非有理化ガウス単位(隠れ次元を省略しない式)
      )      (mx1.15)
         (mx1.16)
                     (mx1.17)
                 (mx1.18)
where  
 
隠れ次元を省略しなければ,SI単位での式とガウス単位での式の物理量の次元は一致して,その相違は,有理化と非有理化の差である因子の現出だけである.ここでは普遍定数が重要な役割を果たしていて,真空光速と明確に区別される.
【注意】上式をみれば,ガウス単位の式の方が美しいとよく言われるのは,おかしいと気付く.重要なパラメータをすべて省略すれば,式は簡単になるかもしれないが,重要な情報が隠れてしまう.
++++++++++++++++++++++++++++++++
◆ 電磁気の単位系についての解説
すべての単位系は,力学の基本量を「ニュートンの運動方程式」,電磁気の基本量を「電磁波の速度方程式」により決める.
「ニュートンの運動方程式」は,次式である.
                                             (mx1.19)
         ;ニュートン力
         ;慣性質量
         ;加速度
「電磁波の速度方程式」は,次式である.
                                           (mx1.20)
         ;真空誘電率
         ;真空透磁率
         ;普遍定数
         ;真空光速
上式から,独立な基本量は5つとなる.
SI単位は,基本量として,Length Mass Time 電流と隠れ次元として普遍定数を使う.LMTI(c)と書く.基本単位として,Meter Kilogram Second Ampere(MKSA)を使う.
自然単位では,式(mx1.20)の物理量をすべて1とするので,非有理化単位となる.また,時間の単位と長さの単位を同次元にしていて,基本量は長さと質量だけである.したがって,次元の混乱をまねき,公式が誤解されやすいので注意が必要である.
++++++++++++++++++++++++++++++++
単位系の理論については,このサイトで完璧に解説している.

「SI単位(国際単位)とガウス単位の理論体系 次元を一致させたマクスウェル方程式(テスラとガウスの次元が同じであることを証明する)」
◆ 電磁量の単位の次元
 

図my.1 電磁量の単位の次元
上表は,表計算ソフトで機械的に計算したものであるが,「理化学辞典」(岩波)の表と比較検証済みである.
 
■ ファラデー・テンソル(電磁場テンソル)
◆ 4次元時空におけるテンソルの扱い
【表記法】例として,type(3, 2)テンソルを,成分を明示する形式として次のように書く.
        
         反変階数(rank of contravariant);上付添字の数
         共変階数(rank ofcovariant);下付添字の数
         次元(dimension);各添字の取り得る数
         ;3次元空間では123をとる,4次元時空では0123をとる
         (0,0)テンソル;スカラー(scalar),実数(real number)
         (1,0)テンソル;ベクトル(vector)
         (0,1)テンソル;1形式(1-form),
               1次微分形式(differentialform of degree 1)
         (m,0)交代テンソル;mベクトル(m-vector)
         (0,n)交代テンソル;n形式(n-form),
                 n次微分形式(differentialform of degree n
         交代の意味は後述.
 
【表記法】成分を明示しないテンソルは,MTW phone book のMTW notationでは,F(太字),シュッツ著では,(チルド)と書く.本書の冒頭のマクスウェル方程式の究極式は,MTW notationで書いてある.
 
テンソルやn形式の詳細は,本書と同じサイトの次を参照のこと.

「マクスウェル方程式のテンソル・微分形式・外微分超入門」
 
【表記法】4次元時空の4軸の変数は次である.
        
ここで,上付添字がついているものはベクトル,下付添字がついているものは1形式である.3次元空間では,ベクトルと1形式を区別する必要がなく,残りの次元の時間は符号が反転するだけである.これは覚えておきたい.
 
シュッツ著によると,3次元空間の添字は,ローマ字アルファベットを使用する.4次元時空の添字は,ギリシャ文字アルファベット使用する.
 
テンソルを4次元時空の4軸の変数で微分するときは,次のように書く.
【表記法】


アインシュタインの総和規約(後述)を適用するときは注意が必要である.SI単位では,時間で微分するときだけ少し特殊であるので明示した.
微分の記号のラウンド「」「」は,日本でよく使われている.カンマ「」「」は,いわゆるMTW notationである.シュッツ著にも使われている.この表記法は,式が見やすくなる特徴がある.
【表記法】4次元のベクトルと1形式の表記法は,シュッツ著により,
とする.ちなみに,MTW notationはすべて太字.
【表記法】成分を明示しない記号と成分を明示する記号をつなぐのは「→」.
         例;
ただし,混乱がなければ,「→」を「=」と書いてもよい.
 
◆ ファラデー・テンソルの成分
【注意】以下の式はメトリックをとして導出する.
ファラデー・テンソル(電磁場テンソル(electromagnetic field tensor))は,2形式((0, 2)交代テンソル=2次微分形式)または2ベクトル((2, 0)交代テンソル)で表現される.
本書の冒頭で述べたファラデーとマクスウェルは,2形式である.ファラデーの成分が式(mx2.1)であり,マクスウェルの成分が式(mx2.2)である.交代の意味は,m行n列の成分とn行m列の成分が,絶対値が同じで符号が反転しているからである.反対称ともいう.
成分は4元あり,成分はとりあえず3次元空間ベクトルとして扱っている.ベクトルなので上付添字である.3次元では1形式との区別はないのでどちらでも式は変わらない.他書ではベクトルを下付添字としている例が多い.
【注意】電場,磁場,電束密度,磁束密度などを3次元微分形式で表現する方法もあるが本書では扱わない.巻末の参考文献の北野,河合を参照のこと.
             (mx2.1)
                  (mx2.2)
         (mx2.3)
                  (mx2.4)
 
◆ ファラデー・テンソルの導出の準備
式(mx2.1)は電磁ポテンシャルを使って,次式により導出される.
              (mx2.5)
         where ;電磁ポテンシャル    
電磁ポテンシャルの詳細は後述する.
 
式(mx2.3)は次式により導出される.
                            (mx2.6)
式(mx2.2)は式(mx2.1)の双対であり,式(mx2.4)は式(mx2.3)の双対であり,次式により導出される.
                    (mx2.7)
                    (mx2.8)
ここで,はレビ・チビタの記号であり,type(2,0)テンソルをtype(0, 2)テンソルへ写像するtype(0, 4)テンソルである.
           when    偶置換のとき           (mx2.9)
            奇置換のとき
             その他
このため,式(mx2.7)と式(mx2.8)の右辺の2形式の下付添字をメトリックで添字を上げて2ベクトルの上付添字にする.添字のについてとりうる次元を代入して和をとる.
 
 
【表記法】アインシュタインの総和規約(Einstein summation convention);
上付添字と下付添字の同じ記号に具体的な次元数を代入して和をとること( を省略することができる).上付添字どうし,下付添字どうしの同じ記号では和をとらない.ベクトルや1形式の微分も原則は同じである.

例として,
        
         where 
【注意】時間成分の添字の上げ/下げするときのみ符号が反転する.
上式は,変換元の0行3列を変換先の2行1列へ置換することを意味する.式(mx2.7)と式(mx2.8)の添字は同じなので,置換も同じである.
置換の変換元と変換先の行と列をまとめると,
               (mx2.10)
また,式(mx2.4)は,別解として,次式により導出できる.
                          (mx2.11)
 
ここまで使った数学の詳細は,本書と同じサイトの次を参照のこと.

「マクスウェル方程式のテンソル・微分形式・外微分超入門」
++++++++++++++++++++++++++++++++
ファラデー・テンソルは,2形式でも2ベクトルでもどちらでもつくれる.type(2, 0)テンソル(2ベクトル)のファラデー・テンソルは,電磁ポテンシャルを使って,次式により導出される.
             (mx2.12)
         where ;電磁ポテンシャル    
                    (mx2.13)
別解として,式(mx2.13)は式(mx2.1)の添字の上げでつくることができる.
                          (mx2.14)
時間成分を上げたときに符号が反転する.つまり変換元の0行目と0列目から成分を移すとき符号が反転する.
2ベクトルのファラデー・テンソルの双対は次式となる.
                (mx2.15)
               (mx2.16)
成分の置換は,式(mx2.10)と同じである.

【ポイントと重要な注意】
マクスウェルがマクスウェル方程式を定式化したときは,微分形式の電磁ポテンシャルを導入していた.後に,ヘルツが当時できたばかりのベクトルの概念を導入して,3次元空間ベクトル表現に変えたものが現在もっともポピュラーになっている(巻頭を参照).
マクスウェル方程式のファラデー・テンソル表現をみると,2ベクトルと2次微分形式(2形式)とどちらを使ってもかまわないのだが,微分可能多様体として外微分を使うところは微分形式が必要である.
本書では,4次元時空では微分形式(differential form,n形式(n-forms))とnベクトル(n-vectors)を自在に使っている.また,3次元空間の電磁気量を一貫してベクトルとして扱っている.
マクスウェル方程式の3次元空間ベクトル表現では微分形を使っているが,これを積分形にすると物理的概念がよく判るようになる(本書では解説なし,式だけ次に掲載).

冒頭の式と次のマクスウェル方程式だけ,MathJax-LaTeXを使っています。このWebソースの<head>の<script>でMathJax-LaTeXを呼んでいます。

【重要な注意】冒頭の式も次の式もどちらも微分形式(differential form)と言われることがある。明確に区別したい場合は,冒頭の式を3形式(three-forms)の式,または,共変交代テンソル場(differential form of degree 3)の式,または,外微分形式(exterior differential form)の式などと言う。

マクスウェル方程式(真空中)・微分形(Differential equations)

$$ div\boldsymbol E=\dfrac{\rho }{\varepsilon _{0}} $$

$$ rot\boldsymbol B-\varepsilon _{0}\mu _{0}\dfrac{\partial \boldsymbol E}{\partial t}=\mu _{0}\boldsymbol j $$

$$ div\boldsymbol B=0 $$

$$ rot\boldsymbol E+\dfrac{\partial \boldsymbol B}{\partial t}=0 $$

マクスウェル方程式(真空中)・積分形(Integral equations)

$$ \int _{S}\boldsymbol E\cdot \boldsymbol dS=\dfrac{Q}{\varepsilon _{0}} $$

$$ \int _{C}\boldsymbol B\cdot d\boldsymbol s=\mu _{0}\int _{S}\boldsymbol j\cdot d\boldsymbol S+\varepsilon _{0}\mu _{0}\int _{S}\dfrac{\partial \boldsymbol E}{\partial t}\cdot d\boldsymbol S $$

$$ \int _{S}\boldsymbol B\cdot d\boldsymbol S=0 $$

$$ \int _{C}\boldsymbol E\cdot \boldsymbol ds=-\int _{S}\dfrac{\partial \boldsymbol B}{\partial t}\cdot d\boldsymbol S $$



■ マクスウェル方程式のファラデー・テンソル表現
【注意】以下の式はメトリックをとして導出する.
【ポイント】ファラデー・テンソルは条件によって何種類もつくれるので,条件を明確にしておくこと.特に,メトリックが,であるか,であるかは必ず明示すること.また,成分を明示することを勧める.SI単位を使っていることも同様.
【表記法】


【表記法】4次元のベクトルと1形式の表記法は,シュッツ著により,
とする.ちなみに,MTW notationはすべて太字.
【表記法】成分を明示しない記号と成分を明示する記号をつなぐのは「→」.
         例;
ただし,混乱がなければ,「→」を「=」と書いてもよい.
++++++++++++++++++++++++++++++++
3次元空間ベクトルの勾配,発散,回転の定義は,
        
        
        
                             (mx3.1)
微分演算子を次のようにする.
                  (mx3.2)
                  (mx3.3)
            
時間成分(0成分)の添字を上げ/下げしたとき符号が反転する.
4元電流密度を次とする.は3次元空間ベクトルである.
                   (mx3.4)
                 (mx3.5)
         where 
4元電流密度の定義式は,式(mx3.20)に示す.
++++++++++++++++++++++++++++++++
ファラデー・テンソルを使って,マクスウェル方程式を表現する.
ファラデー・テンソルの式(mx2.1)を微分すると,マクスウェル方程式の式(mx1.1)と式(mx1.2)が導出できる.
        
              
                           (mx3.6)
        
ファラデー・テンソルの式(mx2.2)を微分すると,マクスウェル方程式の式(mx1.3)と式(mx1.4)が導出できる.
        
              
                               (mx3.7)
        
ファラデー・テンソルの式(mx2.1)を使って,マクスウェル方程式の式(mx1.3)と式(mx1.4)が次のようにも書ける.
                                (mx3.8)
        
整理すると,
マクスウェル方程式の式(mx1.1)と式(mx1.2)は,式(mx3.6)と等価である.
マクスウェル方程式の式(mx1.3)と式(mx1.4)は,式(mx3.7)または式(mx3.8)と等価である.
上の式は,2形式でも2ベクトルでもどちらでも表記できるが,2形式に統一した方がよいと思う。外微分は微分形式に作用させるものだから。
++++++++++++++++++++++++++++++++
式(mx3.6)の成分を書き下して,正しいことを証明する.
        
              
        
              
        
              
        
                      (mx3.9)
++++++++++++++++++++++++++++++++
式(mx3.7)の成分を書き下して,正しいことを証明する.
        
        
              
        
              
        
                                 (mx3.10)
++++++++++++++++++++++++++++++++
式(mx3.8)の成分を書き下して,正しいことを証明する.
        
        
        
        
                                                          (mx3.11)
++++++++++++++++++++++++++++++++
他のファラデー・テンソルを使って,マクスウェル方程式を表現することができる.
ファラデー・テンソルの式(mx2.3)を微分すると,マクスウェル方程式の式(mx1.1)と式(mx1.2)が導出できる.
        
              
                              (mx3.12)
成分の書き下しは省略.
ファラデー・テンソルの式(mx2.4)を微分すると,マクスウェル方程式の式(mx1.3)と式(mx1.4)が導出できる.
        
              
                              (mx3.13)
成分の書き下しは省略.
++++++++++++++++++++++++++++++++
反対称性と対称性を使って,最後は添字の書き換えをすると,
        
        
式(mx3.6)から,電荷の保存則が得られる.
        
         (4元の発散)                     (mx3.14)
式(mx3.5)を使って,式(mx3.14)を計算すると,次の連続の方程式が導出できる.
        
                                        (mx3.15)
上式を積分して,ガウスの発散定理を使用すると,
                       (mx3.16)
表面には電流がないから,上式は0であり,次の電荷の保存則になる.
                                   (mx3.17)
静止系での電荷密度をとすると,運動系では,体積がローレンツ収縮する分だけ電荷密度が大きくなる.
                                                  (mx3.18)
         where 
電流密度は次式となる.
                                      (mx3.19)
         where ;運動系速度,;4元速度
4元電流密度を次のように定義すると式(mx3.4)と一致する.
         (mx3.20)
 
 
 ■ 勾配,発散,回転の3次元テンソルを使った定義
【注意】以下の式はメトリックをとして導出する.
【表記法】


【references】河合俊治「特殊相対性理論の数学的基礎」(裳華房)
最初に,反変ベクトル場(普通のベクトル)を共変ベクトル場(1形式)に写す線形同型写像とそれの逆写像を次式で定義する.
        
                                         (mx4.1)
ここで,基底1形式
        
は,基底ベクトル
        
の双対基底である.
++++++++++++++++++++++++++++++++
スカラー場((0,0)テンソル)の外微分は1形式((0,1)テンソル)になる.つまり,外微分ごとに共変の階数が1つ上がる.
                                  (mx4.2)
1形式からベクトルに逆写像して,勾配を定義する.
         (mx4.3)
上式は勾配のよく見る定義である.3次元では,である.
++++++++++++++++++++++++++++++++
1形式((0,1)テンソル)の外微分は2形式((0,2)テンソル)になる.
                    (mx4.4)
        
           
第1項の計算を進めると,
        
だから,
        
           
           
             
                                       (mx4.5)
ホッジ作用素とレビ・チビタの記号を使って,双対を求める.3次元では,2形式の双対は1形式になる.だからの双対は,
         (mx4.6)
この1形式をベクトルに逆写像して,回転を定義する.
                                       
        
                                                         (mx4.7)
上式は回転のよく見る定義である.ただし,としておく.
++++++++++++++++++++++++++++++++
3次元では,1形式((0,1)テンソル)の双対は2形式((0,2)テンソル)になる.だから,の双対は,
                    (mx4.4)
                    (mx4.8)
2形式((0,2)テンソル)の外微分は3形式((0,3)テンソル)になる.        
                                                         (mx4.9)
3次元では,3形式((0,3)テンソル)の双対はスカラーになる.つまり,
        
となる.これで発散を定義できる.
                        (mx4.10)
上式は発散のよく見る定義である.ただし,としておく.
++++++++++++++++++++++++++++++++
3次元では,1形式とベクトルは区別しないので,勾配,発散,回転のテンソルを使った定義は,
        
        
                                           (mx4.11)
3次元に限って,線形同型写像をしなくても上式は成り立つ.
++++++++++++++++++++++++++++++++
【参考】ポアンカレの補題(証明略)
を閉じたp形式とする.閉じているから
        
このとき
        
を満たす(p-1)形式が局所的に存在する.すわわち,は局所的に積分可能であり,完全微分形式という.当然,次式が恒等的に成り立つ.
        
++++++++++++++++++++++++++++++++
■ ファラデー・テンソルの導出
◆ 電磁ポテンシャルの導入
マクスウェル方程式
                                            (mx1.3)
とポアンカレの補題から,つまり,なら
                                              (mx4.12)
であるような1形式が存在する.が恒等的に成り立つ.1形式の外微分だから回転である.これは,恒等式のに相等する.
                                            (mx4.13)
         ;磁束密度                    
         ;ベクトルポテンシャル        
マクスウェル方程式
                      (mx1.4)
とポアンカレの補題から,つまり,なら,
                                        (mx4.14)
であるような0形式(スカラー)が存在する.が恒等的に成り立つ.スカラー場の外微分なので勾配である.これは,恒等式のに相等する.
                                     (mx4.15)
         ;電場                        
         ;スカラーポテンシャル        
前に述べたように,マクスウェルが最初に採用した式(mx4.13)と式(mx4.15)は,のちにヘルツが修正した今のマクスウェル方程式の式(mx1.3)と式(mx1.4)と等価である.マクスウェルは4次元表現を目指していたのである.
電磁ポテンシャル(スカラーポテンシャルとベクトルポテンシャル)を次のものとする.これは4元テンソルである.
                       (mx4.16)
++++++++++++++++++++++++++++++++
◆ ファラデー・テンソル(電磁場テンソル)の導出
式(mx4.13)と式(mx4.15)は,書き下すと,次式となる.
        
            (mx4.17)
2形式のファラデー・テンソルを導出するのは次式である.
                        (mx2.5)
上式の導出は後述する.
        
            
                                                         (mx4.18)
                      (mx2.1)
         where 
2ベクトルのファラデー・テンソルを導出するのは次式である.
                       (mx2.12)
        
            
                                                         (mx4.19)
                     (mx2.13)
         where 
 
 
■ マクスウェル方程式の電磁ポテンシャル表現
3次元ベクトル表現のマクスウェル方程式(mx1.3)と式(mx1.4)を電磁ポテンシャル表現すると,
                                            (mx4.13)
         ;磁束密度                    
         ;ベクトルポテンシャル        
                                     (mx4.15)
         ;電場                        
         ;スカラーポテンシャル        
【表記法】4元ラプラシアン(ダランベルシャン)の定義式.
        
                (mx5.1)
【注意】メトリックがの場合に上式の時間成分に負符号が付く.のときは空間成分に負符号が付く.
残りの2式を電磁ポテンシャル表現に書き換える.
                                           (mx1.1)
                                  (mx1.2)
式(mx1.1)に式(mx4.15)を代入する.
        
                                  (mx5.2)
                          (mx5.3)
式(mx1.2)に式(mx4.13)と式(mx4.15)を代入する.
        
公式を使って,
        
        
                       (mx5.4)
整理すると,
マクスウェル方程式の式(mx1.1)と式(mx1.2)は,式(mx5.3)と式(mx5.4)と等価である.
マクスウェル方程式の式(mx1.3)と式(mx1.4)は,式(mx4.13)と式(mx4.15)と等価である.
 
■ マクスウェル方程式の電磁ポテンシャル表現(続き)
電磁ポテンシャル(スカラーポテンシャルとベクトルポテンシャル)を次のものとする.これは4元テンソルである.
         (mx4.16)
4元電流密度を次とする.は3次元空間ベクトルである.
             (mx3.4)
式(mx5.3)と式(mx5.4)の一部を書き換える.
             (mx6.1)
式(mx5.3)から,
                             (mx6.2)
式(mx5.4)から,
                               (mx6.3)
2式をまとめて,第2項に式(mx3.3)を使って,
          (mx6.4)
上式(mx6.4)は,式(mx3.6)と等価であり,対になるのは,式(mx2.5)が,式(mx3.8)と等価である.
整理すると,
マクスウェル方程式の式(mx1.1)と式(mx1.2)は,式(mx6.4)と等価である.
マクスウェル方程式の式(mx1.3)と式(mx1.4)は,式(mx2.5)と等価である.
 
 
■ ゲージ変換
◆ ゲージ変換
ゲージ変換を次式とする.
                                     (mx7.1)
                                      (mx7.2)
これを次式に適用する.
                                            (mx4.13)
                                     (mx4.15)
式(mx4.13)は,
        
         where
式(mx4.15)は,
        
となり,方程式の形は変わらない.これをゲージ不変という.
◆ ローレンツ・ゲージ
式(mx6.1)をゼロとするものを,つまり式(mx5.3),式(mx5.4)のカッコの中をゼロとするものをローレンツ・ゲージ条件という.
                 (mx7.3)
電磁ポテンシャル表現のマクスウェル方程式
                          (mx5.3)
                       (mx5.4)
に式(mx7.3)を代入すると,非斉次の波動方程式が得られる.
                                            (mx7.4)
                                           (mx7.5)
2式まとめて,
                       (mx7.6)
式(mx7.4)は式(mx6.4)のカッコの中をゼロとしても得られる.式(mx6.4)が式(mx5.3)と式(mx5.4)を合体したものであるから当然である.
式(mx7.3),式(mx7.6)はローレンツ不変である.
上式がローレンツ・ゲージ条件(mx7.3)を満足しているのを確認する.上式を(mx7.3)に□を作用した式に代入して,
        
電荷保存の式(mx2.13)を使って,
                                   (mx7.7)
式(mx7.4),(mx7.5),(mx7.6)は,ローレンツ・ゲージ条件(mx7.3)を満足している.
 
■ ローレンツ力のファラデー・テンソル表現
◆ ローレンツ力の3次元空間ベクトル表現
                                      (mx8.1)
         q;観測対象の電荷,;観測対象の観測速度
        ;ローレンツ力(Newton力),;電場,;磁束密度
【表記法】3次元空間ベクトルを太字で,4元テンソルを上付矢印で表す.
 
◆ 4元テンソル化
式(mx8.1)にを掛けて4元力の空間部分を算出する.
                           (mx8.2)
         where 
         ;4元力(Minkowski力),;4元速度,c;真空光速
        
の内積との内積から4元力の時間部分を算出する.
                          (mx8.3)
         where 
                (mx8.4)
         where  から 
                       (mx8.5)
 
◆ ローレンツ力のファラデー・テンソル表現
式(mx8.2)と式(mx8.5)を合体すると,ローレンツ力の4元テンソル表現になる.2形式または2ベクトルのファラデー・テンソルを使うこともできるが,MTW phone bookでは,(1, 1)テンソルを使っている.
【ポイント】テンソルの成分の計算での添字の使い方をマスターしてほしい.
                                      (mx8.6)
        
        
         ;4元力(Minkowski力)    
         ;4元速度                    
         ;観測対象の電荷              
         ;ファラデー・テンソル      
                                    (mx8.7)
式(mx8.7)は式(mx8.6)を書き下して導出されるが,別解として,式(mx8.7)は次式により導出される.
                                       (mx8.8)
時間成分を1回上げたときだけ符号が変わる.つまり,式(mx2.1)の第0行目だけ符号が反転する.
式(mx8.6)の成分を書き下して,正しいことを証明する.
        
        
        
        
                                                         (mx8.9)
式(mx8.9)は,式(mx8.2)と式(mx8.5)を書き下したものと一致する.
 
◆ ローレンツ力の公式の導出
電磁ポテンシャルを使ってローレンツ力の公式を導出する.
                                            (mx4.13)
                                     (mx4.15)
これらを用いると,ラグランジアンは次式となる.
                            (mx8.10)
次のオイラー・ラグランジュの方程式を解く.
                                       (mx8.11)
各項を計算する.
              (mx8.12)
           (mx8.13)
ここで,
                           (mx8.14)
                                    (mx8.15)
を使った.
式(mx8.11)に(mx8.12)と(mx8.13)を代入して,
        
               (mx8.16)
式(mx8.1)が導出できた.
 
◆ 磁荷・磁場は物理的に実在しない
我々は,便宜上,磁場を導入する時,まず電流の周りに生じる磁場の方向をアンペールの右ネジの規則で決め,その磁場から動いている電荷が受けるローレンツ力をフレミングの左手の規則を決める.しかし,そのような磁場がどのようにして生じるのかの説明はないのが普通である.
下図のように,電線の電流が右へ流れ,負電荷粒子(電子)が左へ飛行している場合(フレミングの左手の中指は右向き),粒子系から見ると,電線とその電流は右へ移動している.その中の正電荷の方が負電荷よりも速く移動している.従って,正電荷の方がローレンツ収縮が大きく,電線は正に帯電して,飛行負電荷粒子はクーロン力で引きつけられる.

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
図my.2 磁場内の電流(動いている電荷)が受ける力(ローレンツ力)
 
左飛行している粒子から見て,電線は右へ移動している
  電線電流の+電荷の方が-電荷より相対速度が高い
    電線電流の+電荷の方が-電荷よりローレンツ収縮率が大きい
      電線電流の+電荷の方が-電荷より電荷密度が大きい
        電線電流が+に帯電している
          左飛行している粒子はクーロン力を受ける
結論;磁力・ローレンツ力は相対論的クーロン力である
◆ ローレンツ力の公式の導出
 

 
 
 
 
 
 
 
図my.3 動いている電荷が受ける力
 
磁力・ローレンツ力は相対論的クーロン力である.このローレンツ力を,磁場を導入しないで,相対論から導出する方法を示す.
上図のように,固定された電線電流Iから動いている電荷が受ける力をローレンツ力という.一般的には,電線電流Iがつくる磁束密度を算出し,その磁場中を動いている電荷が受ける力Fを算出する.即ち,次式を導出する.フレミングの左手の規則の中指のIは,飛行粒子がつくる電流のことで電線電流のIではない.
                                        (mx8.17)
上式は,電場の場合の式であり,は光速ではなく,普遍定数のことである.SI単位では,である.ここでは,磁束密度を導入しないで,相対論から直接にローレンツ力の公式(上式)を導出する.
下図のように,実験室系から見ると,電線電流は帯電していない.逆に,動いている粒子系から見ると,+電荷と-電荷と相対速度が異なり,ローレンツ収縮率が異なるので,電線電流が帯電している.右飛行粒子からは,-に,左飛行粒子からは,+に帯電しているように見える.この帯電から受ける相対論的クーロン力をローレンツ力という.
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
図my.4 実験室系と粒子系からみた電線電流の線電荷密度
 
線電荷の粒子系における相対論的相対速度は次式となる.
        
粒子系における線電荷密度を算出するには,一旦,線電荷静止系に換算して,次に粒子系に換算する.即ち次式となる.
        
 
図my.4のように,粒子系における線電荷がつくる電場は次式(有理化式)となる.
        
        
        
        
        
        
式(mx8.17)が導出できた.
■ マクスウェル方程式の微分形式・外微分表現(究極式)
ファラデー・テンソルを使って,マクスウェル方程式を微分形式と外微分で表現すると,次の究極の式になる.本書の冒頭の式である.
                                               (mx9.1)
                                                     (mx9.2)
MTW phone bookでは,をFaraday,をMaxwellと呼んでいる.
または次のようにも書ける((mx4.11)を4次元に拡張して).
                                          (mx9.3)
                                           (mx9.4)
         where ;ファラデー・テンソル(2形式)
                 ;4元電流密度(1形式)
                 ;ホッジ作用素(双対をつくる),2つは元に戻る
++++++++++++++++++++++++++++++++
3次元空間ベクトル表現(再掲)
                    ()            (mx1.1)
              ()   (mx1.2)
                                            (mx1.3)
                                       (mx1.4)
ファラデー・テンソル表現(再掲)
                           (mx3.6)
                             (mx3.7)
++++++++++++++++++++++++++++++++
式(mx9.1)と式(mx9.3)は式(mx3.6)と等価であり,つまり式(mx1.1)と式(mx1.2)と等価である.
式(mx9.2)と式(mx9.4)は式(mx3.7)と等価であり,つまり式(mx1.3)と式(mx1.4)と等価である.
式(mx9.3)は式(mx3.6)と式(mx9.7)から,式(mx9.4)は式(mx3.7)と式(mx9.11)から直接導出できる.また,式(mx9.3)と式(mx3.6)は,式(mx9.4)と式(mx3.7)は,同じ式であるということもできる.
 
◆ 1形式の外微分の公式の導出
【表記法】シュッツ著では,などと書くが,チルドを省略する.
式(mx9.2)を導出する.
電磁ポテンシャル(1形式)を次式とする(定義式ではない,単なる1形式の成分・基底展開式).
                                          (mx9.5)
ファラデー・テンソルの定義式は,電磁ポテンシャルを外微分したものである(ついでに1形式の外微分の公式を導出する),
           (mx9.6a)
 
◆ (mx9.2)の導出
           (mx9.6a)
(01成分と10成分を書き下すと,)
          
          
          
                      (mx9.6b)
(係数1/2は反対称の2重和による.01成分と10成分を書き下すと,)
          
式(mx9.6a)と式(mx9.6b)が違うような印象を与えるが,反対称成分の片方だけを使って,次のように定義すれば同じであることが判るであろう.
                         (mx9.6c)
ファラデー・テンソルの2形式の成分・基底展開式を次式とする.
                                  (mx9.7)
式(mx9.6b)と式(mx9.7)を比較して,次のファラデー・テンソルの成分定義式(mx2.5)が導かれる.
                        (mx2.5)
 
式(mx9.6a)をみて,成分をと誤解しないように.
ファラデー・テンソルの成分・基底展開式は,式(mx2.1)を使って,
        
            
          
                     (mx9.8)
【ポイント】テンソルの成分・基底展開式はテンソル積を使うが,微分形式(共変交代テンソル)はウェッジ積が使える.
外微分すると,ポアンカレの補題から0になる.
             (mx9.9)
式(mx9.2)が導出できた.実は,式(mx9.9)はポアンカレの補題から自明である.重要なことは,この式が何と等価になるかである.
【参考】ポアンカレの補題(証明略)
を閉じたp形式とする.閉じているから
        
このとき
        
を満たす(p-1)形式が局所的に存在する.すわわち,は局所的に積分可能であり,完全微分形式という.当然,次式が恒等的に成り立つ.
        
 
◆ 2形式の外微分の公式を導出
2形式を次式として,2形式の外微分の公式を導出する.
        
        
            
            
            
            
              
              
              
              
              
            
              
              
              
上式を使って,式(mx9.8)の外微分を書き下すと,
    
      
(第1項だけ書き下したが,第2項以下も同じ.ウェッジ積は同じものがあると0になることを使って整理できる.)
      
        
        
                     (mx9.10)
各項は独立していて各項が0になり,式(mx3.10)と同じである.つまり式(mx3.7)と等価である.
 
◆ (mx9.1)の導出
2形式が式(mx9.7)ようにを使って定義されているとき,それの双対2形式の成分は,式(mx2.2)のである.ファラデーに対してマクスウェルと呼ばれているものである.ファラデーと同様に2形式(共変交代テンソル)であるから,成分・基底展開式にはウェッジ積が使える.
                            (mx9.11)
この成分を直接使うか,または,基底の双対の関係式(mx10.5)を使って,
        
                     (mx9.12)
上式を外微分すると,
           
        
        
        
            (mx9.13)
一方,4元電流密度(1形式)を次式とする(式(mx3.5)の再掲).
                (mx9.14)
その双対3形式は,基底の双対の関係式(10.9)を使って,
        
               (mx9.15)
式(mx9.13)と式(mx9.15)の各項は独立であり,それらを比べると,式(mx3.9)と同じである.つまり式(mx3.6)と等価である.したがって,式(mx9.13)=式(mx9.15)となり,式(mx9.1)導出できた.
 
 
◆ マクスウェル方程式の物理量の本質は何なのか?
本書では,電磁量の重要な物理量を3次元空間ベクトルとして扱っている.理由は,それらを3次元1形式としても,4次元表現では何も変わらないからである.3次元空間では,ベクトルと1形式は区別できないからである.
他書では,3次元微分形式を採用しているものもある.そうすると,電磁量の重要な物理量がテンソルとして扱われ,どのようなテンソルなのか明確に判るようになる.
0形式(スカラー)の外微分は勾配であり1形式をつくる.
                               (3.15)
1形式の外微分は回転であり2形式をつくる.
           (mx9.6a)
          
外微分は共変階数を1つ増やす.
発散は共変階数を1つ減じる.
                           (mx3.6)
スカラーポテンシャルの勾配である電場とは1形式である.ベクトルポテンシャルも1形式である.
                                            (mx4.15)
ベクトルポテンシャルの回転である磁束密度は2形式である.
                                              (mx4.13)
マクスウェル方程式から,磁場は1形式,電束密度と電流密度は2形式であることが判る.
              ()   (mx1.2)
整理すると,
は0形式,は1形式,は2形式である.
■ 4次元時空における双対変換
◆ 4次元時空における双対形式
4次元時空では,n形式の双対は次のようになる.
0形式(スカラー)の双対は,双対4形式になる.
1形式の双対は,双対3形式になる.
2形式の双対は,双対2形式になる.
3形式の双対は,双対1形式になる.
4形式の双対は,双対0形式になる.
【ポイント】成分の双対変換はレビ・チビタの記号の演算によるが,基底の双対変換を利用すれば,成分を置換し符号を調整するだけの操作となる.
実際の例は,前章の「■ マクスウェル方程式の微分形式・外微分表現」を参照してほしい.
 
◆ 2形式と双対2形式
2形式が次のように定義されているとき,
                                  (mx10.1)
それの双対2形式の成分は次式となる.
                (mx10.2)
         where (式(mx2.9)のレビ・チビタの記号)
双対2形式は次式となる.
             (mx10.3)
基底の双対は次式である.
               (mx10.4)
書き下すと,
        
        
        
        
        
        
整理すると,
        
        
        
        
        
                                  (mx10.5)
 
◆ 1形式と双対3形式
1形式が次式で定義されているとき,
                                     (mx10.6)
双対3形式の定義は次式となる.
                  (mx10.7)
基底の双対は次式である.
                   (mx10.8)
書き下すと,
        
        
        
        
整理すると,
        
        
        
                                  (mx10.9)
 
◆ 3形式と双対1形式
3形式が次式で定義されているとき,
                        (mx10.10)
双対1形式の定義は次式となる.
                            (mx10.11)
基底の双対は次式である.
              (mx10.12)
書き下すと,
        
        
        
                             (mx10.13)
双対1形式の例
               (mx10.14)
【References】
Misner, Thorne, & Wheeler「GRAVITATION」p71-p114(FREEMAN)
         いわゆるMTW phone book
シュッツ「物理学における幾何学的方法」p213-220(吉岡書店)
シュッツ「相対論入門上」p141-p143(丸善)
内山龍雄「相対性理論」p65-p87(丸善)
菅野禮司「微分形式による特殊相対論」p95-p113(丸善)
中野薫夫「相対性理論」p150-p165(岩波書店)
冨田憲二「相対性理論」p16-p46(丸善)
河合俊治「特殊相対性理論の数学的基礎」(裳華房)
北野正雄「新版 マクスウェル方程式」p67-p70(サイエンス社)
「理化学辞典」(岩波)
「数学辞典」(岩波)
 
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